マレーシア、北から南まで名物ラクサ10選

マレーシアやシンガポールで人気の麺料理「ラクサ」。マレーシアのラクサは、日本のラーメンのように、地域によって味が異なります。魚だしにタマリンドの酸味が効いていたり、ココナッツミルク入りのカレースープだったり。つまり、地元で愛されるご当地麺なのです。マレー半島北部からボルネオ島まで、ラクサ旅に出かけましょう。

2024.02.26

【北部エリア・ペナン州】世界が認めた個性派ラクサ

ペナンラクサ Penang Laksa。真っ黒な海老ソースは海老の旨味と甘味を凝縮したもので味にコクが出る。知名度が高く、ペナン以外でも食べられる。
ペナンラクサ Penang Laksa。真っ黒な海老ソースは海老の旨味と甘味を凝縮したもので味にコクが出る。知名度が高く、ペナン以外でも食べられる。

スープのとろっした食感はイワシやサバのほぐし身によるもの。食欲をそそるタマリンドの酸味とトウガラシの辛みを効かせ、潮の匂いを10倍濃くしたような独特な香りの海老ソースで仕上げます。麺はやや太めの米麺です。非常に人気のラクサで、過去にアメリカの放送局CNNが発表した世界の美食ランキングで第7位に輝いたこともあります。

【北部エリア・ペナン州】タイの影響を受けたラクサ

レマッラクサLemak Laksa、またはシャムラクサ Siam Laksaとよばれる。シャムとはタイのこと。ペナン島で数軒だけ提供しているめずらしいラクサ。
レマッラクサLemak Laksa、またはシャムラクサ Siam Laksaとよばれる。シャムとはタイのこと。ペナン島で数軒だけ提供しているめずらしいラクサ。

魚だしをベースに、ココナッツミルク、コブミカンの葉やレモングラスなどのハーブをたっぷりと。食欲をそそる爽やかなハーブの香り。クリーミーなスープは、後追いでほのかな酸味があり、思わずゴクゴク飲みたくなる絶妙なバランスです。麺は丸太の米麺。ハーブを多種使うなど、地理的に近いタイの影響を受けているそうです。

【北部エリア・ケダ州】魚だしと酸味が絶妙なラクサ

ケダラクサ Kedah Laksa。写真は、魚が丸一尾のった豪華版の「イカン・セコ Ikan Sekoq」。ランカウイ空港近くの海沿いに屋台が並ぶ。
ケダラクサ Kedah Laksa。写真は、魚が丸一尾のった豪華版の「イカン・セコ Ikan Sekoq」。ランカウイ空港近くの海沿いに屋台が並ぶ。

魚だしにタマリンドの酸味を加えたシンプルな味のスープ。丼ではなく、パスタ皿のような平皿で提供され、いわば、つゆだく麺といった装いです。スプーンとフォークで食べるのも特徴で、麺はスプーンですくえるように短めにカットされています。麺の食感はやわらか。タマリンドのフルーティーな酸味が、南国の暑さによく合います。

【北部エリア・クランタン州/トレンガヌ州】真っ白なくるくる麺、ラクサム

ラクサム Laksam。まろやかなココナッツミルク味のスープともっちりした弾力の麺がよく合う。クランタン州のラクサムはほのかに甘い。
ラクサム Laksam。まろやかなココナッツミルク味のスープともっちりした弾力の麺がよく合う。クランタン州のラクサムはほのかに甘い。

すすって食べる麺ではなく、かんで食べる麺です。生米を水に数日浸し、石臼で潰して出てきた米汁を薄くのし、蒸したものをくるくる巻いています。食べてみると、どことなくマカロニ風。スープは、ココナッツミルクをベースに、野菜やハーブをアクセントに。スープ自体はまったく辛くないので、好みでサンバルを加えて味わいます。

【中部エリア・ペラ州】見た目も味もユニークなラクサ

【中部エリア・ペラ州】見た目も味もユニークなラクサ
【中部エリア・ペラ州】見た目も味もユニークなラクサ

ラクサ・ブルサランはペラ州の一部で食べられているラクサです。サランとは鳥の巣のこと。最初は、えっどういうこと? と思ったのですが、運ばれてきて納得。溶き卵を高温の油で揚げた極細の集合体が麺を覆っていて、たしかに鳥の巣っぽい。酸味の効いた魚のスープに卵の味がだんだん混じっていき、まろやかな味に変化していきます。

【中部エリア・クアラルンプール】スパイスが香るラクサ

カレーラクサ Curry Laksa。独特な香りのダウンクスンDaun Kesomは、別名ラクサリーフとよばれるほどラクサに欠かせないハーブ(写真右の緑色)。
カレーラクサ Curry Laksa。独特な香りのダウンクスンDaun Kesomは、別名ラクサリーフとよばれるほどラクサに欠かせないハーブ(写真右の緑色)。

日本人が想像するラクサにいちばん近い味。スパイスが香るスープはトウガラシの辛みがしっかり効いているので、食べすすめるごとに額やわきの下に汗がじんわり。食べ終わるころには、汗がどばーっと噴き出し、体内の毒素を出しきったような爽快感です。麺は弾力のある卵麺。具は、油揚げ、湯葉、鶏肉、魚のすり身などバラエティ豊かです。

【南部エリア・マラッカ州】世界遺産級の贅沢ラクサ

ニョニャ・ラクサ Nyonya Laksa。もともとは料理上手のプラナカン(女性はニョニャ)とよばれる人々の家庭料理。現在はニョニャ・レストランで提供されている。
ニョニャ・ラクサ Nyonya Laksa。もともとは料理上手のプラナカン(女性はニョニャ)とよばれる人々の家庭料理。現在はニョニャ・レストランで提供されている。

多種のスパイスやハーブをすり潰し、じっくり炒めて作ったペーストがスープの核。だしは鶏や海老でとります。麺は、卵麺とビーフンのミックスが定番。具は、海鮮、油揚げ、キュウリです。カレーラクサによく似ていますが、ココナッツミルクが多めで、とろみのあるスープが麺によくからみます。奥深い味わいは一度食べると忘れられません。

【南部エリア・ジョホール州】魚をたっぷり使った伝統ラクサ

ラクサ・ジョホール Laksa Johor。見た目は地味だが、魚やハーブが入った滋味深い味。麺がスパゲティなのは、昔のジョホール州の王様のお気に入りに由来する。
ラクサ・ジョホール Laksa Johor。見た目は地味だが、魚やハーブが入った滋味深い味。麺がスパゲティなのは、昔のジョホール州の王様のお気に入りに由来する。

ほかのラクサとは一線を画す味。麺にかかっているのは、魚をすり潰したソースで、風味豊かな味わい。ソースと麺の間にハーブや生野菜がザクザク入っていて、多様な食感と味が楽しめます。麺はなんとスパゲティ。皿の脇にのっている赤いサンバルが辛さのアクセントです。伝統的には宗教行事や誕生日など宴で提供される祝い料理です。

【ボルネオ・サバ州】みんなに好まれるラクサ

サバ・ラクサSabah Laksa。ちなみにサバ州には2つのラクサがあり、錦糸卵タイプとゆで卵タイプ。錦糸卵のほうがマイルドな辛さで食べやすい。
サバ・ラクサSabah Laksa。ちなみにサバ州には2つのラクサがあり、錦糸卵タイプとゆで卵タイプ。錦糸卵のほうがマイルドな辛さで食べやすい。

ココナッツミルク入りのスープは、辛さひかえめでマイルドな味。つけダレのサンバルを加えて、辛くすることもできます。麺は細めの米麺で、つるっとした喉ごしが特徴。具はバラエティに富んでいて、なかでも海老、鶏肉、錦糸卵はマスト。麺にからみやすいように、鶏肉と錦糸卵が細く切りそろえられているのがポイントです。

【ボルネオ・サラワク州】サラワク人が愛してやまないラクサ

サラワク・ラクサ Sarawak Laksa。食べる直前にカラマンシーをしぼりかけ、爽やかなコクをプラスする。辛くしたいなら、サンバル追加で。
サラワク・ラクサ Sarawak Laksa。食べる直前にカラマンシーをしぼりかけ、爽やかなコクをプラスする。辛くしたいなら、サンバル追加で。

ココナッツミルク入りのサラサラスープ。胡椒や山椒などスパイスの香りは強いものの、辛すぎず、濃すぎず、非常に食べやすい味です。麺は、つるっとした細い米麺。具は海老、鶏肉、油揚げ、錦糸卵など。ちなみに、マレーシアのなかでラクサ好きが多いのは、ここサラワク州。ラクサを1週間食べないと禁断症状が出るというサラワク人もいるそうです。

いかがでしたか。10選以外にも、ココナッツサンバル添え、ちまき入り(‼)などローカルラクサがまだあるそうなので、ラクサ探求を続けます! そうそう、これらのラクサは、その地域では単に「ラクサ Laksa」と呼ばれているので、その点ご注意を。おいしいラクサ巡り、楽しんでみて下さい。

 

 文・写真
古川 音 (マレーシアごはんの会)

マレーシア
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