マレーシアの朝は屋台メシから始まる
マレーシアでは、朝から外食があたり前。理由はとてもシンプルで、気温が30度を超える日中よりも、比較的涼しい朝に活動をしたほうが、店側もお客さん側も楽だから。午前中にさっさと売り切って店じまい、という繁盛店も多数あります。地元で人気のローカルフードを食べたいなら、朝活をおすすめします。
以前マレーシアに住んでいたとき、「朝7時半にロティ・チャナイの店に行こう!」と友人に誘われ、えっ、そんなに朝早く? と驚いたのですが、行ってみれば、多くのお客さんでにぎやか。子ども連れの家族から目がラブラブのカップルまで、団らんあり、打ち合わせあり、デートあり、とシチュエーションも様々なようでした。
外食文化が発展しているマレーシアは、ランチで外食するのとなんら変わらない感覚で、朝から屋台メシ。そのため提供されているメニューは、ご飯、麺、カレーと何でもあり。ここでは、ぜひ朝に食べて欲しい料理を、そのルーツとともに紹介します。
香り立つご飯と旨辛サンバルのコンビ「ナシレマッ」
ココナッツミルクで炊いた香りのいいご飯に、唐辛子や玉ねぎを炒めて作るサンバルソースを混ぜて食べる料理。マレーシア人なら誰しも“推し”の店があり、好みや思い出を語り出したらエンドレス。もともと農作業前の朝食としてうまれたパワーフードで、小魚、卵、ピーナッツのおかず付きで栄養バランスもグッド。サンバルの辛さで目も覚めます。
![バナナの葉で包まれた三角ナシレマッNasi Lemak。店で購入し、会社や家で食べる人も多い。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2022/08/34b52fb7882476c785e7df69b66a9525-scaled.jpg)
![三角の包みを開くと、サンバルに染まったご飯が現れる。上はゆで卵、小魚は中に埋まっていた。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2022/08/02-scaled.jpg)
インドをルーツにもつカレー味の軽食「ロティ・チャナイ」
ロティとはマレー語でパンのこと。クロワッサンのような軽い食感の軽食で、スパイスの効いたカレーソースにつけて食べます。インドからの移民が持ちこんだパロタが原型で、具なしのプレーンに加えて、卵、チーズ、イワシ、バナナなど具入りも人気。練乳や砂糖をかけたスイーツタイプもあります。インド系の食堂「ママッ」で食べるのが定番です。
![カレーソースのスパイスの香りが食欲をそそる。辛くないものがほとんどなので食べやすい。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2022/08/4a984ab991473b7d4fa78103be8e37a8-scaled.jpg)
![ロティ・チャナイ Roti Canaiの生地は、空中でくるっと回転させながら、薄くのばしていく。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2022/08/06-scaled.jpg)
ココナッツが甘く香るモーニングの定番「カヤトースト」
カスタードクリームのようなリッチな甘さのカヤジャム。ココナッツミルクと卵で作るスプレッドで、20世紀の初めごろ、西洋のジャムの影響を受けて考案されたのだそう。カリッと焼いたトーストに、カヤジャムとバターをWでサンドするのがお決まり。それを温泉卵に浸せば、コクまろ甘じょっぱくてやみつきになります。たかがトーストと侮るなかれです。
![カヤトーストKaya Toast、温泉卵、コピ Kopi(練乳入り珈琲)が、マレーシア流モーニング。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2022/08/af37f51f68e62e23c154a43721c5d768-scaled.jpg)
![パンは炭火で香ばしく焼くのが伝統。薄切りの食パンが主流だが、厚切りふわふわタイプもある。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2022/08/04-scaled.jpg)
ふくよかな香りの漢方スープ「バクテー」
10種以上の漢方と一緒に、豚肉を煮込んだスープ料理。中国からの移民が、体力勝負の仕事の前に、豚の骨を煎じて飲んだのが始まりといわれています。現在も1日の活力源として朝に食べる習慣があり、週末の朝ともなると、クアラルンプールのバクテー店は大にぎわい。家族や友人同士でワイワイ鍋を囲んでいる姿をみると、こちらまで元気になります。
![バクテー Bak Kut Teh は地方ごとに違いがあり、クアラルンプールは汁多めの土鍋タイプ。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2022/08/c6945c91306813ba21e19f8972231282-scaled.jpg)
朝にぴったり。サラサラ食べられる「粥」
日本でなじみのある粥は、マレーシアでも定番の味。粥屋台が町のいたるところにあり、ケンタッキーフライドチキン(KFC)などファストフード店でもメニュー化されているほどポピュラー。胃にやさしいので、イスラム教徒の断食明けの食事としても重宝されています。トロトロに煮込んだもの、水分多めのサラサラ系。さらに具も多彩にあるので、毎日食べても飽きません。
![暑いマレーシアで熱い粥を食べるなら朝食がベスト。具は、塩卵、ピータン、豚団子が定番。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2022/08/f952b17be10e03e9ee6037ec72cf4c9f-scaled.jpg)
![マレーシア発のファストフード店の粥。紙カップ入りで、トッピングは豪華なフライドチキン。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2022/08/09-scaled.jpg)
朝からつるっと。バラエティ豊かな「麺類」
中国由来のマレーシアの麺は、東南アジアらしい食材が加わって多様な味に。朝から提供されている麺も、唐辛子タレ付きの鶏スープ麺、香味油のまぜ麺、カレー麺など多種多彩。とくに中国系マレーシア人は、ご飯よりも麺のほうが“軽い食事”と考えるらしく、朝食はいつも麺という人さえいます。ご飯とおかずではなく、麺とおかずという食事パターンもあります。
![ミー・スープ Mee Supは、鶏だしのあっさり麺。ビーフンと卵麺のハーフハーフが人気。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2022/08/a18758f53d97edf309de19afecc43eb4-scaled.jpg)
![ボルネオ島で人気のサラワク・ラクサ Sarawak Laksaは、スパイスが香るコクまろカレー麺。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2022/08/11-scaled.jpg)
豚まん、カレーまん、カヤまん。種類豊富な「パオ」
町のいたるところにあるパオの店。パオとは中華まんのことで、もちろん中国由来。ただし、豚まん、チャーシュまんといった定番の味から、チキンカレーまん、野菜まん、カヤまん(カヤジャム入り)もあり、かなりローカル化されています。日本でたとえるなら、菓子パンのような立ち位置で親しまれています。ホットケースで販売されており、ほかほか、ふかふかです。
![マレーシア人はパオ Pauの外側の薄皮を剥いて食べることが多い。たしかに日本よりも厚くて固い。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2022/08/8707a2c44f1c66cefa0960bcfad78ddb-scaled.jpg)
もちもち食感の甘い蒸し菓子「クエ」
カヤトーストしかり、果物しかり、朝食に甘いものを食べるのはマレーシアではごく普通のこと。なかでも人気なのが、大福やういろうによく似たクエ。米粉、もち米、ココナッツミルクなどを使って、蒸したり揚げたりした、ひとり分サイズのおやつの総称です。甘いクエは、食後のデザートというより、手軽に栄養補給ができるエナジーバーのような存在です。
![クエ Kuehの種類は多数。赤、ピンク、緑などカラフルな色だが、ちょうどいい甘さで食べやすい。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2022/08/d5f763eea4715fd44056681aa1daf163-scaled.jpg)
![道端でクエを売っているおばちゃん。涼しい朝だけ営業し、売り切って店じまい。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2022/08/14-scaled.jpg)
文・写真(TOP写真のぞく):古川 音 (Oto Furukawa)