野生動物を守る、ボルネオのエコツーリズム
ボルネオの熱帯雨林をおもな生息地とするオランウータンとマレーグマ。近年、森林伐採や密猟などの影響で個体数が激減し、国際自然保護連合によるレッドリスト(絶滅危惧種)に指定されています。現在、ボルネオ各地にある保護施設では、旅行者でも支援が可能なプログラムを提供しています。
“森の人”オランウータンのリハビリセンター
![ヒトと共通の祖先をもつ大型類人猿オランウータン。名前のオランは人、ウータンは森というマレー語で、合わせて“森の人”という意味になる。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2023/03/ph02-scaled.jpg)
未開の自然に覆われたボルネオのサラワク州。親とはぐれたり、森で怪我をしたり、違法飼育などの理由で、森で自活できなくなったオランウータンの保護施設が2か所あります。
「セメンゴ・ワイルドライフ・センター」は、州都クチンから車で約40分。入場料(大人RM10)が施設のサポート費となり、1日2回の餌やりの様子を見ることができます。木の枝にぶら下がって遊んだり、ココナッツの実をほじほじするオランウータンの姿のなんて愛らしいこと! 施設がオープンしているのは 8:00~10:00、14:00~16:00で、 9:00~と15:00~ が食事の時間になっています。
![施設は森のなかにあり、オランウータンは自由に行き来ができる。野生の果物が豊富に実る時期は、餌場に姿を見せないことも。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2023/03/ph03-scaled.jpg)
![保護されているオランウータンには名前があり、里親のような寄付支援ができる。縁組をした1頭の成長の様子を定期的にレポートしてもらえる。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2023/03/ph04-scaled.jpg)
![H2Hの参加には、各自でヘルメットなどの装備の用意や昼食、交通手段の手配が必要なので、現地の旅行会社(インサー・ツアーズなど)で申し込むのが一般的。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2023/03/ph05.jpg)
もうひとつの施設「マタン・ワイルドライフ・センター」の見学も可能 (入場料:大人RM20 / オープン時間:8:00~17:00 )。また、スタッフとともに実際の保護活動を体験できる「ハート2ハート(H2H)」プログラムも提供しています。サラワク州森林公社の飼育専門家の指導のもと、餌を作ったり、施設内の掃除をするボランティア活動です。プログラム終了後、オランウータンの保護活動に貢献したことを記した証明書が手渡されます。
マレーグマから地球全体のバランスを考えよう
![胸にある太陽のような模様から英語でサンベアー(Sun Bear)と呼ばれるマレーグマ。世界で確認されている熊のなかで、1番小さな体格。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2023/03/ph06.jpg)
マレーグマの個体数は、森林の減少や違法なペット取引、密猟などの影響で、この30年間で約35%も減少。ボルネオ北東部、スールー海に面した交易の町サンダカンにある「ボルネオ・サンベアー・コンサーベーション・センター (BSBCC)」は、そんなマレーグマを守り、未来につなぐ活動をしているリハビリセンターです。
![マレーグマは、土の中の餌を食べるために長い爪で土を耕し、植物の種を糞と一緒に排出することで新たな植生が構築されるため、森全体の維持に欠かせない存在といわれている。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2023/03/ph07.jpg)
旅行者は施設内を見学することができ、区画内でリラックスしているマレーグマの姿を見ることができます。またパネル展示でSDGsについての学習も可。もちろん、入場料 (大人RM50)は施設のサポート費になります (オープン時間: 9:00~15:30)。
![BSBCCでは短期ボランティアを毎月募集。14日間と28日間の2つのスケジュールがあり、保護活動にじっくり携わることができる。](https://travel.asean.or.jp/wp-content/uploads/2023/03/ph08.jpg)
リハビリプログラムのなかには、退屈などから引き起こされる異常な行動を防ぐために、本能や好奇心を刺激する“エンリッチメント”とよぶ時間も。工夫を凝らした様々なプログラムで、野生復帰をサポートしています。
そして、もうひとつ注目して欲しいのが、BSBCC Japanの活動。コロナ禍で資金調達ができなくなった施設を応援したいと、マレーグマを研究する大学生2人が立ち上げ。クラウドファンディング、講演、グッズ販売などの活動で、日本からBSBCCへの支援を続けています。
「ボルネオの熱帯雨林は、この約40年で168,500 ㎢も失われました。パーム油の生産を目的にしたプランテーションの拡大がおもな原因だといわれています。じつは私たちの身の回りにある日用品にもパーム油はよく使われていて、マレーグマの住処である熱帯雨林が失われている現実は、他人事ではないのです」とBSBCC Japanの須崎さん。
同じ地球で暮らす仲間として、ヒトと自然の共存をテーマにしたエコツーリズムを積極的に利用したいものです。
取材・写真協力:インサー・ツアーズ、BSBCC Japan、マレーシア政府観光局
文・写真(一部):古川 音 (Oto Furukawa)