ローカル市場を巡る、マレーシアぐるり旅

モノと人であふれる市場。生活に必要なモノが所狭しと並び、売り買いをするだけでなく、顔なじみ同士が世間話をしたり、食事のために立ち寄ったりと、地域のコミュニティー広場のような場所。その町の暮らしがみえる市場に行ってみましょう。

2023.02.07

アロー・スターの「プカン・ラブ」

王国として栄えた歴史をもつケダ州の州都アロー・スター。マハティール元首相の生まれ故郷で、彼が帰省の際に立ち寄ると言われているのが「プカン・ラブ」です。町の中心部にあり、野菜や肉などの生鮮食品から、調味料、珍味、食器、衣類、布、籠などの手工芸品まで300以上のショップがそろっています。とくにマレー系の伝統食が人気で、スパイスで味をつけたふりかけや保存性の高い発酵魚が名物。併設の食堂ではミーゴレンやチキンライスが楽しめます。

ほぐした肉や魚をスパイスと一緒に長時間炒めた「スルンデン Serunding」は、ご飯のお供にぴったり。鮨のルーツといわれる なれずし に似た「プカサン・イカン Pekasam Ikan」
ほぐした肉や魚をスパイスと一緒に長時間炒めた「スルンデン Serunding」は、ご飯のお供にぴったり。鮨のルーツといわれる なれずし に似た「プカサン・イカン Pekasam Ikan」
ラタン製の食卓カバー、色付けされたパンダンの葉で編んだゴザやバッグは日常的に使われている
ラタン製の食卓カバー、色付けされたパンダンの葉で編んだゴザやバッグは日常的に使われている
プカン・ラブ  Pekan Rabu
Kompleks Pekan Rabu, Jalan Tunku Ibrahim, Alor Setar, Malaysia

コタバルの「シティ・カディジャ・マーケット」

全体を見渡せる3階(現地での表記は2F)が絶好の撮影スポット。カレー麺やナシチャンプルを提供する食堂も上の階にある。
全体を見渡せる3階(現地での表記は2F)が絶好の撮影スポット。カレー麺やナシチャンプルを提供する食堂も上の階にある。

タイ国境に近い東北地方の町コタバルにあり、観光スポットとしても有名な市場。とにかく規模が大きいのが特徴で、魚、肉、野菜、果物、調味料や乾物、子供用のおもちゃに土産物まで充実。見どころは、カラフルな壁に囲まれた吹き抜けの建物内にある野菜売り場。彩り豊かな野菜が並べられた台の上に、店主が座って店番をする、という独特のスタイルで迎えてくれます。ココナッツの香りを効かせた蒸し菓子は小腹が空いたときのおやつにぴったりです。

店主の約8割が女性という珍しい市場。名前の「シティ・カディジャ」は、実業家としての才能があったといわれる預言者ムハンマドの妻の名前。
店主の約8割が女性という珍しい市場。名前の「シティ・カディジャ」は、実業家としての才能があったといわれる預言者ムハンマドの妻の名前。

ペナンの「チョウラスタ・マーケット」

ペナンのジョージタウンにある地元密着型の市場。魚、肉、乾物、ドライフルーツ、スパイスが揃い、なかでも地元産のエビ発酵調味料「ブラチャン」の質のよさは折り紙付き。おもしろいのは市場の名前の由来。“チョウク”にはヒンディー語の“広場”やウルドゥ語の“交差点”という意味があり、その昔、店主の多くがインド移民で、彼らがこの場をそう呼んでいたのが始まりだとか。現在もインド系マレーシア人を含め、多様な民族が訪れています。

チョウラスタ・マーケットが開設されたのは1890年代。100年以上が過ぎた現在、3世代に渡って訪れている買い物客もいる。
チョウラスタ・マーケットが開設されたのは1890年代。100年以上が過ぎた現在、3世代に渡って訪れている買い物客もいる。
市場の近くにはやラクサ(麺料理)やチェンドル(かき氷)の名店があり、この辺り一帯がご飯好きの集まるエリアになっている。
市場の近くにはやラクサ(麺料理)やチェンドル(かき氷)の名店があり、この辺り一帯がご飯好きの集まるエリアになっている。
チョウラスタ・マーケット  Chowrasta Market
Lot 124, Jalan Penang, George Town, Pulau Pinang, Malaysia

クアラルンプールの「チョウキット・マーケット」 

クアラルンプールの中心地から電車でたったの4駅。都心のビル街からガラリと雰囲気を変え、地元の暮らしを支えている市場です。魚、肉、果物、野菜、スパイスや乾物まで種類豊富に並んでいます。多品種のバナナ、インパクトのある世界最大級の果物ジャックフルーツ、ジャングルでとれる豆や山積みになって売られているハーブの多様さに、マレーシアの食文化の豊かさを実感。都心のレストランのシェフが仕入れに通う市場でもあります。

大都市の市場は時代とともに減少傾向にあり、ここも一時期、取り壊しの話しがあったが、現在は活気を取り戻し、早朝からにぎやかに営業している。
大都市の市場は時代とともに減少傾向にあり、ここも一時期、取り壊しの話しがあったが、現在は活気を取り戻し、早朝からにぎやかに営業している。
上から吊り下がっているのは「プタイ Petai」。ジャングルで収穫される野菜で、房の中にそら豆に似た形状のマメが入っている。独特の香りがあり、サンバルでピリ辛に炒めると最高においしい。
上から吊り下がっているのは「プタイ Petai」。ジャングルで収穫される野菜で、房の中にそら豆に似た形状のマメが入っている。独特の香りがあり、サンバルでピリ辛に炒めると最高においしい。

クチンの「クニャラン・マーケット」

ボルネオ島サラワク州の州都クチンにある市場。肉、魚、野菜、果物、調味料などが整然と並んでいて、なかでも広いスペースをとっているのが豚肉売り場。市場のある地域には、豚肉好きの華人や先住民族が多く暮らしているため、毎日の食卓に豚肉は必須。頭のてっぺんから足の先まで販売しています。また、上の階にあるフードコートが人気で、買いものが終わったら、サラワク名物の麺「コロミー」を食べてひと休みするのが地元の人の日常です。

市場で買いものをするメリットは、売り場の店主と直接話ができること。鮮度の見極め方、知らない野菜の食べ方を教えてもらったり、下処理のリクエストもできる。
市場で買いものをするメリットは、売り場の店主と直接話ができること。鮮度の見極め方、知らない野菜の食べ方を教えてもらったり、下処理のリクエストもできる。
市場は地域の需要に合わせた品ぞろえをしている。たとえば、豚肉を食べないイスラム教徒の多い地域では、豚肉の売り場が無いか、別棟になっている市場もある。
市場は地域の需要に合わせた品ぞろえをしている。たとえば、豚肉を食べないイスラム教徒の多い地域では、豚肉の売り場が無いか、別棟になっている市場もある。
クニャラン・パーク・マーケット  Kenyalang Park Market
Kampung Kenyalang Park Kuching, Sarawak

 

文・写真: 古川 音 (Oto Furukawa)

マレーシア
BACK TO TOP