色鮮やかな布をまとう
ブルネイの民族衣装とは
日本の伝統的な民族衣装といえば和服ですが、現代では結婚式などの特別な日に着られることが多いかもしれません。ブルネイのマレー系の民族衣装は、特に女性は普段着として着る人も多く、色やデザインも華やかでファッションのひとつとなっています。また原住民族が多く住むブルネイでは、その民族ならではの衣装を見ることができます。ブルネイのマレー系の民族衣装と他の民族衣装もご紹介します。
マレー系民族衣装 男性用|チャラ マライユ
男性の民族衣装であるチャラ マライユは、腰巻とボタンがポイントです。腰巻は「シンジャン」と呼ばれ、錦糸を使用した高価なものだと10万円を越えるものもあります。また首元から胸あたりにつけるボタンは通常5つあり、イスラム教の基本となる5つの柱を意味します。そして「ソンコック」と呼ばれる帽子は、黒い帽子が正装ですが、街中で見られる白い帽子はイスラム教の聖地であるメッカの巡礼を終えた男性が被るものです。
マレー系民族衣装 女性様|バジュ クロン
女性の民族衣装はバジュ クロンと言います。バジュはマレー語で「洋服」、クロンは「包む」という意味があります。イスラム教のブルネイでは、女性の過度な肌の露出は好まれず、体全体が覆われるようなスタイルとなっています。バジュ クロンは上下が分かれており、一般的なものはトップスも腰の辺りまでかかる長さとなっています。また髪を覆うスカーフは、ブルネイでは「トゥドン」または「ヒジャブ」と呼ばれます。被るだけですでに巻いてあるかのように縫われているものから、一本の長いストールをおしゃれにくるくると自分で巻き上げるスタイルなどさまざまです。
最近では、既製品の販売も増えてきましたが、以前は生地から選び、仕立て屋で自分にぴったりの民族衣装を作るのが一般的でした。生地屋は街の至るところにあり、生地の長さは男性の民族衣装を作るのに少なくても3m、女性の民族衣装で2m程度が必要となります。また女性の場合は、アクセントとしてレースのリボンやボタンなどをつける人もいます。
生地を購入したら仕立て屋へ行き、どんなデザインにしたいか相談します。男性の場合は、すでに型が決まっているためサイズだけを確認します。通常は1週間程度で完成しますが、断食明けのお祭り、ハリラヤの時期はあいさつ回りなどをするのに民族衣装を新調する人が多く、通常よりも日数がかかり、1カ月ほどが必要です。
元首狩族|イバン族の民族衣装
ブルネイにはマレー系、中華系以外にも原住民族が暮らしています。普段の生活で民族衣装を着用することは少ないのですが、それぞれの個性的なデザインはとても魅力的です。飛び地のエリア、テンブロン地区にはイバン族という民族が多く住んでいます。
イバン族の男性の民族衣装は、上半身は裸に赤いベストのみ、また帽子の羽などから元首狩族を彷彿させる力強さを表現しています。あわせていつでも狩りに出かけられる刀を携えているのも特徴です。
女性用はビーズを編み込んだ赤と黄色が基調の可愛らしいデザインです。腰には本物のコインを使用した腰飾りをつけています。こちらの民族衣装は全てハンドメイドで作られています。
そのほかの原住民族の衣装には日本の着物に似たようなデザインがあったりと、ブルネイでは多様な民族衣装を見ることができます。ブルネイを訪問する際はいろいろな民族衣装をご覧になってみてください。
文・画像: 株式会社ワールドコンパス 亀井沙織