カラフルでおいしい、東南アジア4ヵ国の伝統おやつ
色鮮やかで目を引くおやつ。自然な色合いを好む日本人からするとドギツク感じるかもしれませんが、カラフルにするのは理由があり、天然由来の着色のことも。今回は、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシアのカラフルおやつに注目。地理的に近いこの4ヵ国は、食の共通点が多く、似たおやつもたくさんあるのです。
タイ: 本物そっくりのミニチュア菓子「ルークチュップ」
フルーツや野菜の形を模した2~4センチの小さなおやつです。ペーストにした緑豆をココナッツミルクで練り、本物にできるだけ忠実にミリ単位でヘタやスジを細工し、色をつけます。素朴な甘みに、こし餡のような食感が特徴。表面がツヤッと輝いているのはゼラチンでコーティングしているため。現地では贈りものとしても重宝されています。
タイ: ジャスミンが香るゼリー菓子「ウンクローブ」
砂糖水にジャスミンの花の香りを加え、寒天で固めてキューブ状にカットしたもの。数日ほど乾燥させると、表面の砂糖が結晶化してシャリッとした食感に。カラフルにするのは見た目をかわいくするため。マトゥムという柑橘系の果物を模した穴の空いた丸型、最近では洋風のバラ型で固めるなど、カタチもかわいく変化しています。
マレーシア: ピンク、しましま、もっちりが特徴の「クエラピス」
米粉にココナッツミルクなどを混ぜて蒸したもの。もっちりした食感の生菓子です。層(ラピス)になっているのが特徴で、中国菓子の「九層糕」由来。ラッキーナンバーの“九”を層で表現しています。パンダン味の緑色、黒糖味の茶色もありますが、マレーシアではピンクが定番。赤系で縁起がいいため、結婚式でもよく食べられています。
マレーシア: アジアらしい香りを味わう団子「オンデオンデ」
椰子砂糖の甘いシロップ入りの団子。パンダンの葉っぱのしぼり汁を加えて、美しい緑色に仕上げます。パンダンとは、アジア各地で使われている香りづけのハーブ。炊き立てのご飯のような、ほっこりした香りが特徴です。和菓子での緑色は抹茶味ですが、東南アジアで緑色のおやつをみたら、それはパンダン味でほぼ間違いなし、です。
シンガポール: 見た目も味もにぎやかで楽しい「アイスカチャン」
カラフルなシロップを合いがけし、真っ黒な仙草ゼリー、茶色の小豆、半透明のアタップ(サトウヤシの実のシロップ漬け)など、インパクトのある色で埋めつくされている「アイスカチャン」。黄色のスイートコーンも人気の具で、甘じょっぱさが意外に合います。とにかく具だくさんなので、氷が溶けても楽しみは継続!
シンガポール: 亀を模った祝い菓子「アンクー・クエ」
やわらかいもち粉の生地で緑豆餡やピーナッツ餡などを包んで蒸したもの。日本の大福にそっくりです。アンクーとは福建語で「紅亀」。明るい未来の象徴である赤(紅)、表面には長寿を願う亀の甲羅が模られています。最近は伝統の赤色に加えて、黄、紫、緑などカラフル。中の餡もドリアン味やココナッツ味など多彩に展開しています。
インドネシア: 虹色のミルク菓子「ボラ・ボラ・スス・プランギ」
ボラはボール、ススはミルク、プランギは虹で、名前のとおり虹色にカラーリングされています。おもしろいのは、赤ちゃん用の粉ミルクを食材として使うこと。タピオカ粉と一緒に煎り、練乳を加えて丸めてできあがり。ちなみにインドネシアでは、3歳ぐらいまで粉ミルクを飲む子どももいるらしく、粉ミルクの消費量が多いとか。
インドネシア: 蜜入りのやわらかい団子「クレポン」
上で紹介したマレーシアの「オンデオンデ」と同じもの。このようにアジア各国には、名前は違っても同じおやつがたくさんあります。緑色の団子は、香りの良いパンダンのしぼり汁を練り込んだもの。茶色は椰子砂糖味です。削ったココナッツの実をまぶして、中の蜜がこぼれないように、ひと口でどうぞ。茹でたてがおいしいです。
文: 古川 音(Oto Furukawa)
取材・写真協力: 下関崇子、伊能すみ子、淺野曜子(アジアごはんズ)