バンコクの注目エリア
「新生」チャオプラヤー川沿いを巡る
近年、再開発が進み、観光スポットやラグジュアリーホテルも増えたバンコクのチャオプラヤー川沿い。古くからある運河を巡るボートツアーも興味深いし、新しい商業施設やホテルでは、タイの新しい息吹きを感じることができます。渋滞に煩わされることなく、水の上から訪れるバンコクを楽しんでみましょう。
ロングテイルボートで運河へと分け入るツアー
チャオプラヤー川は、タイ北部を水源とし、バンコクを経てタイランド湾に流れ込む総延長370キロ余りの大河。かつて、チャオプラヤー川の本流からは支流や運河が網の目のように町中に張り巡らされており、バンコクの街は、物流の大動脈であったこの川を中心にして発展してきました。
川沿いには、高速ボート「チャオプラヤー・エクスプレス」が運行し、市内は渋滞が激しいこともあって、市民にとって通勤や移動の大切な『足』となっています。観光客にとっても、王宮やワット・アルンなどの主だった観光地を訪れる際には、「チャオプラヤー・エクスプレス」での移動をうまく取り入れるとスムーズに移動ができそうです。
近年、人気が高いのは、細長いロングテイルボートに乗って出かけるバンコクヤイ地区への運河ツアー。バンコクヤイ地区は、チャオプラヤー川の西側に広がるエリアで、18世紀にトンブリー王朝が置かれた場所。川の東側とは少し異なるノスタルジックな雰囲気が未だに残ります。
10名ほどが乗れる細長いロングテイルボートは、細い運河にも入っていけるので、かつてのバンコクの水辺の暮らしぶりを間近にできる面白さがあります。
話題の寺院やマーケットに水上からアクセス
サトーン船着場方面からバンコクヤイ運河へと入るのは、ワット・カンラヤーナミットがある水門から。カンラヤーナミットとは、「真の友」という意味で、良縁に恵まれる、旅の安全にご利益があるとされる寺院です。
左右の家々を眺めながら、しばらくするとたどり着くのが、「ワット・パークナム・パーシーチャルーン」。桟橋から寺院の敷地内に上がり、本棟の最上階まで階段を上がると、ガラス製の仏塔の上に、まるでアートのような仏伝図の天井画が目に飛び込んできます。
「クローン・バーン・ルアン」は、運河沿いの散歩道のような水上マーケット。昔ながらのタイ家屋が多く立ち並ぶこのあたりは、トンブリー王朝が開かれた時代に歴史を遡る古いコミュニティです。土産物店やローカルな食堂、アーティスト・ハウス(バーン・シラピン)などが川添いに並び、しばし、のんびりと歩いてみたくなります。
ボートで、運河から訪れるとより雰囲気が楽しめるのが「王室御座船博物館」。 国立博物館で、実際にパレードでも使用された国王専用のきらびやかな御座船を含め8隻の王室御座船が展示されています。間近で見る御座船は、金箔や漆塗りの細工がなんとも見事。水の都バンコクならではのロイヤルバージは、なんともエキゾティックです。
「ワット・カンラヤーナミット」からはバンコクヤイ運河をぐるりと巡って、3時間ほど。ロングテイルボートに乗り降りしながらの小さな船旅は、飽きることがありません。
新しいホテルで、新しいリバーサイドを満喫
チャオプラヤー川沿いには、「マンダリンオエリエンタルバンコク」や「ペニンシュラバンコク」などのラグジュアリーホテルがあり、船で向こう岸に渡るスパや川を眺めるレストランなどが人気です。デュシット地区には、個性的なランドスケープデザインで知られるビル・ベンスリー氏が手がけ、アンティークが博物館のように飾られている「ザ・サイアム」も川沿いにあり、タイ好きにつとに好まれています。
2020年にサトーン地区のチャルンクルン通り添いにオープンしたのが、「カペラ・バンコク」。すべての客室がリバービューで、ジェットバスがついたプールを備えるヴィラもあります。プライベート感を重要視した、ハイエンドなホテルです。
「カペラ・バンコク」に隣接する場所に、やはり2020年に開業したのが「フォーシーズンズホテル・バンコク・アット・チャオプラヤー・リバー」。川と融合するようなランドスケープデザインで、都会にいながらリゾート気分を満喫できます。メインダイニング「リヴァ・デル・フィウメ」で、川を眺めながらいただく朝食は、ウェルネス志向の美味しさ。
バンコクの歴史とともに変わってきたチャオプラヤー川。その新時代を実感できるリバーサイドでの滞在を楽しんでみたいものです。
文・写真 : 坪田三千代 (Michiyo Tsubota)