シンガポールのおしゃれタウンで
華やかなプラナカン文化と出合う

ピンクやターコイズブルーなど、パステル調の色合いが美しい建築群や、陶器、刺繍などの可愛らしい伝統雑貨が今でも愛されるプラナカン文化。シンガポールにプラナカン文化が根付いた背景は15~17世紀の交易の時代に遡ります。ASEAN諸国の中でも先進的なイメージが強いシンガポール。その雰囲気とはまた異なる、華やかに栄えた伝統あるプラナカンの街並みや文化を楽しみましょう。

2024.09.04

シンガポールのプラナカン

プラナカン(Peranakan)とは、マレー語で「その土地で生まれた子」を意味します。

15〜17世紀の交易の時代に、中国南部の福建省周辺から、マレー半島のアンダマン海沿岸にやってきた中華系移民の子孫、または現地のマレー人女性と結婚して生まれた子孫たちのことを指します。彼らによるコミュニティが現地と中国の文化を融合させ、独自の文化が誕生しました。また、「プラナカン」は主に中華系移民の子孫の総称として呼ばれていますが、インド系移民による子孫などもプラナカンに含まれます。

商人として活躍していたプラナカンたちは、新しいビジネスの拠点を求めて、マラッカやペナン、シンガポール、ジャワ島など海峡エリアへ移住していきました。こうしてプラナカンのコミュニティは東南アジアの各所へと広がっていきます。シンガポールやマレーシアに住むプラナカンの人々は「海峡華人」(Straits Chinese)と呼ばれていました。

ショップハウスで彩られた街を散策

シンガポールでプラナカン文化を体感したい人は、ぜひカトン地区へ。カトンはシンガポールのプラナカンコミュニティの中心地。なかでも有名なのは、クーン・セン・ロードの両脇に連なる、「ショップハウス」と呼ばれる建築が立ち並ぶ風景です。

「ショップハウス」は長屋のような2階建ての建築で、ピンク、ターコイズブルーなど鮮やかで乙女心をくすぐるカラーの家々が並びます。思わずカメラを手に取りたくなるような、フォトジェニックな空間が広がり、街歩きや散策にぴったりのエリアです。

「ショップハウス」には世界各国の建築様式が取り入れられています。例えば、窓枠は扉が取り付けられた地中海風、多彩なレリーフとカラフルに色付けされた中華風タイル、マレー建築風の鼻隠し板など、数々の趣向が凝らされています。一部は現在も住居として使われていますが、当時のインテリアや趣向を残しつつ、リノベーションしたカフェやレストランが多くあります。

クーン・セン・ロードへのアクセスは、カトン地区のメインストリートであるイースト・コースト・ロード沿いにある巨大ショッピングモール「i12カトン」を目印にしましょう。モールからジョー・チャット・ロードに入り、道沿いを北上すると到着します。

柱は古代ギリシャの建築様式であるコリント様式をモチーフにしたデザイン。
柱は古代ギリシャの建築様式であるコリント様式をモチーフにしたデザイン。
「プラナカン タイル」のルーツはヨーロッパ発祥の「マジョリカタイル」。主にイギリスやベルギー、日本などから輸入された。
「プラナカン タイル」のルーツはヨーロッパ発祥の「マジョリカタイル」。主にイギリスやベルギー、日本などから輸入された。

素敵なプラナカン雑貨を手に入れる

建築と同様にプラナカン雑貨も、カラフルな色合いと豪華絢爛な装飾が特徴です。宝飾品などのファッション、陶磁器、家具などに施された、繊細で美しいデザインが現在も人々を魅了しています。プラナカン文化では男性を「ババ」(Baba)、女性を「ニョニャ」(Nyonya)と呼び、陶器は「ニョニャ・ウェア」(Nyonya Ware)と称されます。陶器は主に鳳凰と牡丹の花がモチーフに描かれ、中国製陶器の特徴である「ファミーユ・ローズ」(Famille Rose)という油絵のような絵付け技法を用いた、ピンクやターコイズブルーの色をベースにしたデザインが一般的です。

中国陶器では珍しいポットやティーカップは、シンガポールらしい逸品。
中国陶器では珍しいポットやティーカップは、シンガポールらしい逸品。

当時の女性たちにとって、手工芸は料理に並ぶ花嫁修業のひとつ。なかでも刺繍はプラナカン雑貨を代表する伝統ある手工芸です。刺繍はサンダルやバッグ、ハンカチ、インドネシアの伝統衣装クバヤ(Kebaya)などの日常的なアイテムに施されました。かつては中国式のシルクや、インドの金・銀糸を使用した刺繍が一般的でしたが、トレンドは徐々にビーズ刺繍へと変化しました。ビーズ刺繍はその後、ヨーロッパからもたらされた極小で宝石のように輝く「ガラスビーズ」の登場によって、それまでよりも精密な絵柄が描けるようになりました。デザインは牡丹や鳳凰のほか、バラや蝶々など豪華絢爛なもの。

カラフルで繊細なプラナカン雑貨は、お土産としてもきっと喜ばれるはず。旅の記念に、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

 

伝統のニョニャ料理を味わう

プラナカン料理は中華料理と東南アジアの食材や調理法を組み合わせた料理スタイル。

特徴のひとつとして、タマリンドなどのスパイスやチリソース、ココナッツミルクをベースにしていることが挙げられます。マレーシアやシンガポールの代表的な麺料理「ラクサ」は、地域ごとに味が異なることが特徴。海老の出汁をベースに、カレー風味に仕立てたものがプラナカン流のラクサ。「カトン・ラクサ」や「ニョニャ・ラクサ」と呼ばれています。カトン地区には、地元の人からも愛されるプラナカン料理を味わえる名店がたくさんあるので、街歩きと一緒に伝統料理を味わってみてください。

「アヤム・バンガン」。グリルチキンをココナッツソースで煮た、定番のプラナカン料理。
「アヤム・バンガン」。グリルチキンをココナッツソースで煮た、定番のプラナカン料理。
プラナカン風のエビチリ、「サンバル・ウダン」。「ウダン」はマレー語で「海老」のこと。ピリッと辛いサンバルソースとの相性が抜群。
プラナカン風のエビチリ、「サンバル・ウダン」。「ウダン」はマレー語で「海老」のこと。ピリッと辛いサンバルソースとの相性が抜群。
シンガポール
BACK TO TOP