国内唯一の世界遺産
ボタニカルなシンガポール植物園へ
緑が国土の約3分の1を覆っているシンガポールは「グリーン・シティ」と呼ばれ、国民の暮らしに緑を取り入れる環境づくりに国をあげて取り組んでいます。その考えの礎にはイギリスの植民地時代にさかのぼります。
当時、植物研究に力を入れていた近代シンガポールの創始者と呼ばれるラッフルズや植物学者たちによって植物実験用の庭園として「シンガポール植物園」が設立されました。シンガポール唯一の世界遺産に認定され、歴史的にも価値のある観光名所として世界中の人々を魅了しています。
シンガポール植物園とは?
1859年に設立された、約82ヘクタールの広さを誇る植物園。イギリスの植民地下において、国の重要な植物学研究所として機能し、現在も植物学における実験や絶滅危惧植物の保護にも取り組んでいます。ランやジンジャーをはじめ、約6万種の植物が揃います。
シンガポール唯一の世界遺産であると同時に、初めて世界遺産に登録された熱帯植物園です。入園は無料で、園内にはピクニックを楽しむ人やジョギングをする人など、市民の憩いの場としても親しまれています。園内にはレストランなど休憩スポットも多数。散策をしていると野生の猿、リスに出会えることも。ボランティアによる無料ツアーも実施しているので、参加してみるのもおすすめです。
ナショナル・オーキッド・ガーデン
園内一番の見どころである「ナショナル・オーキッド・ガーデン」は、Tyersall Gate(タイアサル・ゲート)から歩いて約5分の場所にあります。約3haの敷地で、世界の中でも最大規模のラン園です。1000種を超えるランと2000種以上の交配種があり、その数は約6万株といわれています。気温や高度など異なる環境で育つランを別々の温室で管理しています。
ラン以外には、アナナス、ショウガ、熱帯シャクナゲなど東南アジアを中心とした植物が展示されています。鶴の噴水など、フォトスポットもたくさん。シンガポール植物園内ではナショナル・オーキッド・ガーデンのみ有料で、大人1人$15の入園料が必要です。
ジンジャー・ガーデン
1866年建設。約1ヘクタールの敷地面積に、約250種以上のショウガ科の花が咲き誇ります。ショウガは原産地ごとに分かれて展示されています。おすすめの観賞花は、ジンジャーガーデンのロゴにも採用されている「トーチジンジャー」。東南アジア原産とされる熱帯地方全域でみられる観賞用植物で、アジア料理のスパイスとしても利用されています。生で食べたりお菓子にも使ったりと用途は様々。シンガポール植物園に来たら知っておきたい花のひとつです。
番外編 近未来型植物園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」
政府が力を上げて国土緑化政策を進めているシンガポール。近年の象徴的な取り組みが、2012年にオープンした「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」です。シンガポール中心部のマリーナ・ベイ・ウォーターフロントに建設され、最新技術を駆使したシンガポール最大の近未来型植物園です。高さ20~50mの人工の木「スーパーツリー」が全18本植えられ、それらを囲うように熱帯植物が生い茂る空間は世界でここだけしか見られない景色。夜のライトアップでは、幻想的な空間を楽しむことができます。
シンガポールでは2030年に向けて「シンガポール・グリーンプラン2030」というプロジェクトが進行中。「City in Nature(自然の中の都市)」、「Sustainable Living(サステナブルリビング)」、「Energy Reset(エネルギーのリセット)」、「Green Economy(グリーンエコノミー)」、「Resilient Future(レジリエントな未来)」など、取り組むべき5つの課題が挙げられています。近年ASEAN諸国のエネルギー需要は大幅に増加しており、環境問題がますます深刻に。現代社会でのシンガポールの取り組みは、世界中から注目を集めています。