ナッ神信仰の聖地 ポッパ山へ
バガンの南東約50㎞に位置するポッパ山は、ミャンマー古来の民間信仰であるナッ神信仰の総本山。切り立った岩峰の頂上に黄金のパゴダが輝く奇景の聖地には、ミャンマー独特の不思議な宗教世界が広がっています。
ポッパ山とは?
ポッパ山はおよそ25万年前に活動を止めた死火山で、標高は1518m。水に恵まれ、深い緑に覆われた一帯は国立公園に指定されており、珍しい動植物の宝庫でもあります。
また、ポッパ山の南西側の麓には「タウン・カラッ」と呼ばれる切り立った岩頸(がんけい)がそびえ、その頂には黄金の仏塔が輝いています。この奇観の地は大僧正ボーミンガウンが瞑想修行をした仏教の聖地であると同時に、バガン朝以前からの土着信仰であるナッ神信仰の聖地として敬われてきました。
一般的に「ポッパ山」というと、このタウン・カラッを指す場合が多く、多くの旅行者や巡礼者がタウン・カラッの頂上にあるポッパ山寺院を目指して集まります。
ナッ神とは?
ミャンマー土着の精霊信仰であるナッ神は、おもに非業の死を遂げた人の魂が現世に留まったものとされており、時代や地域ごとに数多くのナッ神が生まれ、その伝説が語り継がれてきました。ナッ神は強い霊力で人や国に災いや恩恵をもたらす神で、家を守るナッ、交通安全のナッなど、それぞれ異なる霊力を有するとされています。
ポッパメードー神殿を参拝
ポッパメードー神殿は、タウン・カラッの南参道入り口の正面に立つお堂で、入口を守る2頭の虎が目印。内部にはポッパ・メードー(ポッパ山の母)を中心に2人の息子(タウンビョン兄弟)、その他大勢のナッ神が並んでいます。派手な衣装に身を包んだナッ神像は、マネキン風のユニークな風貌。神像には花や果物、紙幣やタバコなど、それぞれのナッ神の好物とされる供物が捧げられていて、賑やかな雰囲気です。
ポッパメードー伝説
ビルマ南部のモン族の国、タトン王国は、11世紀にアノーヤター王の進軍によって滅びました。その際、タトンの王族や高僧が王都バガンに連行されましたが、マヌーハ王の妹であるメーワナはポッパ山へ逃亡。その正体を隠すため、花喰い鬼女に化けて暮らしました。
やがて、アノーヤター王の家臣で、聖地ポッパ山で花を集める役についていたビャッタと恋仲になり、2人の息子が生まれました。しかしそのことで仕事がおろそかになったピャッタは、王の怒りを買い処刑されてしまいます。2人の息子も王に奪われてしまいました。
成長した2人の息子は勇敢な兵士として王によく仕えましたが、遠征先の不祥事で王に殺されてしまいます。その後、バガンに帰還する船が動かなくなり、王は兄弟の祟りと考え、2人をナッ神に祭り、タウンビョンの土地を与えました。
息子たちの死を知り悶死したメーワナもまた、ナッ神ポッパメードー(ポッパ山の母)となりました。
タウンビョン兄弟ともよばれるコードージー、コードーレイの兄弟ナッ神は商売繁盛や健康を守る神、母ポッパメードーは女性や家族を守る神として庶民の信仰を集めています。
参道の階段上り
タウン・カラッの麓から山頂までの高さはおよそ73m。山頂のポッパ山寺院へは777段の階段を上ります。参道口は3か所あり、どこから入っても同じ場所に合流。それぞれの参道にはみやげ店が並び、国内外からの参拝者、花やドリンクの売り子たち、ポッパ山に住み着くサルたちでとても賑やかです。
参道の合流地点からは靴を脱いで本格的な階段上りが始まります。他の寺院と同様に、肌の露出が多い服装での入場は禁じられています。
長い階段の途中にもポッパメードーゆかりの祠やスポットが点在。ところどころにベンチがあるので、周囲の景観も楽しめます。山頂付近はかなりの急階段になるのでゆっくり上りましょう。
ポッパ山寺院
タウン・カラッ山頂にはボーミンガウンが奉納した黄金の仏塔をはじめ、仏像を安置する小堂や、ナッ神の長「大いなる山の精霊」マハーギリを祭る祠堂などがわずかな敷地に立ち並んでいます。
ボーミンガウンは、1938~52年にポッパ山で瞑想修行をして超人的な霊力を身につけた僧侶。ミャンマーでは誰もが知る人気の聖者で、ゆかりの地であるポッパ山寺院には至るところに彼の肖像画や生前の写真、像が置かれています。眉間にしわを寄せ、立て膝でタバコをくゆらせる姿で知られ、人間味にあふれる雰囲気が多くの人々に愛され、尊敬されています。
ポッパ・マウンテンリゾート
ポッパ・マウンテンリゾートは、自然豊かなポッパ山の中腹に広がるナチュラルリゾートです
宿泊はもちろん、レストランのみの利用も可能で、洗練されたミャンマー料理をワインとともに味わうことができます。タウン・カラッを見下ろすテラス席でのランチがおすすめです。