虹色の階段のフォトジェニックさがSNSで話題
クアラルンプール郊外の神秘スポット、バトゥ洞窟
世界中から年間150万人もの観光客が訪れる人気スポット、バトゥ洞窟(Batu Caves)。マレーシア随一のヒンドゥー教の聖地で、神秘的な空気に包まれています。約4億年前から続く洞窟の圧倒的なスケールにも魅了されます。
寺院へと導く272段のカラフルな階段
クアラルンプールから電車で約30分。19世紀末にインドから渡ってきた商人が建てたといわれるヒンドゥー寺院、バトゥ洞窟があります。目を惹くビビッドな色合いの彫刻、山を背景に広がる壮大な規模感は、非日常感をもたらしてくれます。
まず、高さ43メートの巨大な黄金の像が出迎えてくれます。


階段はかなり急こう配でハードなので、心して上りましょう。赤、黄、青、緑など虹色に塗られた階段は、下から眺めるだけでも一見の価値があります。
インド系コミュニティの信仰の場
さて、マレーシアなのになぜインドのヒンドゥー教? と思う方がいらっしゃるかもしれません。マレーシアは多民族が暮らす国で、マレー系、中国系、その次に多いのがインドをルーツに持つ民族。彼らの約80%はヒンドゥー教徒なのです。

筆者は何度もここに訪れており、ある日は、小さな赤ちゃんが両親に抱っこされて司祭の祝いを受けていたり、またある日には、40~50人の参列者が集う結婚式が催されている光景を目にしました。つまりここは、地元のヒンドゥー教徒の人が人生の節目に訪れる大事な場所なのです。
奇祭と称されるタイプーサムの舞台
バトゥ洞窟といえば、毎年1~2月に開催されるタイプーサムというお祭りに触れておきましょう。この日、マレーシア全土から約100万人もの信者が訪れ、階段を裸足で上り、洞窟内にある神殿を目指します。
このタイプーサムは、本国インドでは危険という理由で禁止になったお祭り。

信者の頬に鉄串が貫通していたり、その先に神聖とされるライムがぶらさがっていたり。頭の上で、重そうなミルクポットを支えて、階段を上る子ども達もいます。これは、神への忠誠心を示すために苦しみに堪える行で、祭り当日の信者たちはトランス状態にあり、肉体の痛みはあまり感じないのだそう。
信者でなくても見学はできます。ただ、かなり人が多く、ごった返しているので、ツアーで参加するのが安心です。
洞窟内に建てられたヒンドゥー寺院の神殿
階段の上は、巨大な石灰岩の洞窟。見上げると空洞があり、内部はそこから差し込むやわらかな光で満たされています。


今回訪れたとき、司祭のような方に手招きされ近づくと、ひたいに灰を塗ってもらうという貴重な体験をしました。灰は、すべては無に返るというヒンドゥー教の教えの象徴なのだとか。お布施として、気持ちの金額を渡しました。




壮大な自然の造形美と神聖な信仰心に触れることができるバトゥ洞窟。クアラルンプールから日帰りで訪れることができるおすすめスポットです。
服装について
信仰の場なので、露出の少ない服装で訪れましょう。とくに階段上の洞窟の入り口で服装チェックがあり、ひざ上丈のパンツやスカートの場合は、身体を覆うマントやスカーフの着用が義務づけられていて、有料レンタルになります。
文・写真
古川 音 (マレーシア食文化ライター)
WAU マレーシア文化通信〈ワウ〉




