路地に名店あり
ペナングルメと街歩き
東洋の真珠とよばれるペナン島。世界有数の観光スポットで、中心地のジョージタウンはユネスコ世界文化遺産に登録された歴史ある町。古くからの商店や食堂が多く残っています。地元の人が集まる店を訪ねながら、ジョージタウンを散策してみましょう。
18世紀後半、ペナンはイギリスの海峡植民地のひとつでした。当時のイギリス東インド会社の総督フランシス・ライトが、自分の居住する地区をジョージタウンと名付けたのがこの地名の由来。現在もイギリス入植時の白亜のコロニアル調の建物が町を彩っています。
ヨーロッパとアジアを結ぶ海の玄関口として栄え、多様な民族が移り住んだ歴史によってうまれたのがペナンのおいしいごはん。迷路のように広がる通りを歩きながら、ペナンならではの食の魅力を発見しましょう。
ペナン通り、二大名物料理店を目指そう
向かったのは、ペナンのランドマークであるコムタに向かって南下するペナン通り。この通りには、ペナンの郷土料理のなかで抜群の知名度を誇るチェンドルとペナンラクサの店があります。
こんなところに行列? と驚くほど忽然と現れる人の群れ。30℃を超す猛暑のなかで、ひとときの涼をもたらしてくれるかき氷、チェンドルを求めて並ぶ人たちです。フレッシュなココナッツミルクと椰子砂糖のシロップをかけたかき氷で、つるんとしたゼリー状のチェンドルが、みるみるうちに溶けていく氷とともに喉をかけぬけていきます。
チェンドル店の奥、少年の絵が目印の建物に入ると、大量のスープが煮込まれた大鍋や山盛りの麺が目に飛び込んできます。小さな屋台が集まった昔ながらのフードコートで、ここのペナンラクサは絶品。酸味と辛味のバランスが絶妙な魚だしのスープ麺。ペナン人のソウルフードです。
キャンベル通り、多民族の食文化に浸ろう
町を東西に横断するキャンベル通り。歩いてみると、あらためてここで暮らす民族の多様さ、その影響でうまれた食の豊かさに驚かされます。
路地にあるカヤトースト店。たかがトースト(失礼!)にここまで並ぶ? と思うほどの大行列です。昔ながらの炭火で焼いたトーストに、ココナッツミルクで作った甘いカヤをサンド。シンプルな味なのに、わざわざ並んでも食べたくなるのは、炭火の香りと路地という秘密基地のような独特の空間。どうもペナン人は狭い路地にロマンを感じるようです。
次は、黄色と緑色のパステルカラーが目を惹くショップハウスへ。ショップハウスとは、1階が店舗、2階以上が居住エリアになっている伝統家屋で、ここは1907年創業のナシカンダー店です。
今やマレーシア全土に広がっているナシカンダーは、ペナン発祥のカレー食堂。スパイスをまぶして揚げた鶏唐揚げ、チキンクルマを食べみると、あまりのおいしさに踊りたくなったほど。とくにスパイスの香りのよさがすばらしく、鼻の穴をふくらませて完食です。
さて、キャンベル通りにはもうひとつ、はずせない店があります。Toh Soon Café、Hameediyahを通り過ぎ、左にすこし入ったところ。昼時は地元の人であふれかえっている中華食堂です。食通の多いペナン人のお墨付きとあって、肉料理から野菜料理まで何を食べてもおいしい。飛び交う英語や中国語に包まれ、ペナンの日常を体感できます。
トランスファー通り、喧騒をものともしないカレー店
ペナン通りと並行し、島を南北に走るトランスファー通り。狭い歩道に人だかりを発見。奥行きが極端に短い店で、お客さんが車道に向かって横並びにずらっと座るという、トランスファー通りおなじみの光景。車やバイクの波を眺めながらカレーをほおばれば、スパイスの芳醇な香りと異国満点の景色に気分が高揚していきます。
炎天下のペナンで歩き回るのは体力勝負なところがあるので、おめあての食堂を決めて歩いてみて下さい。ペナンの喧噪や熱気がじんわりと体にしみ込み、旅から帰っても、その余韻があなたをやさしく包んでくれることでしょう。
文・写真
古川 音 (マレーシアごはんの会)