密林に埋もれた巨大寺院
ボロブドゥール徹底案内

ジャワ島中部の深い密林の中で、1000年の時を超えて発見されたボロブドゥール寺院。仏教の世界観を体現した壮大なスケールの石造建築は、多くの謎を秘めつつ、かつてこの地に花開いた高度な文明の存在を静かに伝えています。世界遺産に指定され、ジャワを代表する観光地として賑わうボロブドゥールの魅力と見どころを紹介します。

ボロブドゥール寺院の歴史

ボロブドゥール寺院は建築当時の記録が少なく実体が明らかになっていない部分が多々ありますが、発掘されたいくつかの碑文から、紀元780〜825年ごろに当時中部ジャワを支配したシャイレーンドラ家の王によって建造されたといわれています。王家の歴史は長くは続かず、9世紀にはヒンドゥー教を信仰するサンジャヤ家に実権は移行。さらには920年のムラピ山の大噴火、のちのイスラム勢力の侵入などにより、仏教寺院のボロブドゥールは密林の彼方に埋もれ、忘れ去られてしまいました。

この寺院が再発見されたのは建設からおよそ1000年の時を経た1814年。当時ジャワの総督代理で、のちにシンガポールを建設したトーマス・スタンフォード・ラッフルズが伝説を頼りに発見したといわれています。20世紀に入ってからはオランダやユネスコによる大規模な修復が行われ、1991年に世界文化遺産に登録。現在も調査が続けられています。

ボロブドゥール寺院 Candi Borobudur
Jalan Badrawati, Borobudur, Magelang, Jawa

世界最大級の仏教遺跡

ボロブドゥール寺院は自然の丘に土を盛り、その周りを黒い安山岩で覆った建造物。一辺約120mの正方形の基壇の上に5層の方形の壇と3層の円形の壇が積み重ねられ、頂点には大ストゥーパ(仏塔)が置かれています。寺院といっても内部空間はなく、一見するとエジプトのピラミッドを思わせる、他にあまり例のない不思議な形をした仏教施設といえます。全体の高さは当初は42mあったといわれますが、破損のため現在は33.5m。石造の仏教遺跡としては世界最大級の規模を誇ります。

内部空間をもたない代わりに、寺院の表面には1460面ものレリーフが刻まれ、全部で504体の仏像が各所に配されています。東西南北それぞれの中心線には石段が設けられており、参拝者は下から上へと順に見て回ることができる構造となっています。

またこの寺院を俯瞰すると、その形や仏像の配置などは、大乗仏教の世界観を表した曼陀羅図とよく似ています。シャイレーンドラ朝の王たちは、それまでヒンドゥー教が主流だった地域の人々に大乗仏教の世界観や教えを理解させ、仏の威光によって王権を強化したのではないかといわれています。

基壇

正方形のボロブドゥール寺院は正確に東西南北に向いており、参拝者は東側から入場します。入り口には日本の狛犬のように一対の獅子像が配されていますが、ライオンというよりは猿のような顔をしているのが特徴。当時ライオンを見たことがないジャワの人々が想像で造ったからだといわれています。

寺院の最下層にあたる基壇には特に彫刻等は見られないのですが、実は現在の基壇の内側にはもう一つの隠れた基壇があり、160面のレリーフが刻まれているとのこと。東南の角にその一部が露出しているので必見です。このレリーフは因果応報がテーマといわれ、「欲界」に住む人間が飲酒や博打に耽る姿が描かれています。その一部に「ウィルーパ(醜い顔)」という古代ジャワ文字が残っており、建築年代を推定する手がかりの1つになったといわれています。

回廊

5層の方壇の間にはそれぞれ4つの回廊が設けられており、壁面には仏教の教えを説くレリーフが絵巻のように並んでいます。見学は一番下の第1回廊東面中央から時計回りに進むのがルールで、一周したら一段上の第2回廊へ。これが第4回廊まで続きます。

第一回廊は左右の壁にびっしりとレリーフが刻まれており、ブッダの人生を伝える『仏伝記』、ブッダの前世の行いを記した『ジャータカ(本生譚)』などの各場面が描かれています。

剃髪して出家を果たす場面
剃髪して出家を果たす場面
サルナートでの初説法
サルナートでの初説法
普賢菩薩に出会う最終場面
普賢菩薩に出会う最終場面

続く第2回廊のレリーフは、『華厳経』のなかにある『入法界品』を描いたものが中心。これは青年スダナ(善財童子)が53人の賢人に教えを請いながら旅を続け、悟りへの道を追求する物語で、この物語は第4回廊まで続いています。第3回廊の弥勒菩薩に出会う場面、第4回廊の普賢菩薩に出会うラストシーンなどがみどころです。

円壇

回廊を抜けて上層へ進むと一気に視界が開け、建物の屋上に出たような気分になります。この寺院の構造は仏教の三界を表しているともいわれ、基壇部分が煩悩に満ちた「欲界」、方壇部分が欲望は断ったがまだ肉体が存在する「色界」、最上部が精神的要素のみとなった「無色界」となっています。

その「無色界」にあたる上層部には3重の円壇があり、下層から32基、24基、16基の合計72基の小ストゥーパが規則的に並んでいます。各ストゥーパの中には一体ずつ仏座像が安置されており、格子の間から内部を見ることができます。また、現在は見学用に仏像を露出させているものが東西に1基ずつあり、撮影スポットとして人気があります。

大ストゥーパ

寺院の中心を成す最上部のストゥーパは基底直径16mを超える巨大なもので、仏教世界の中心である須弥山を象徴しているとされます。形状はブッダの遺骨や遺髪を納めた仏舎利塔のようですが、内部には何も入っていません。

仏像と印相

ボロブドゥールには全部で504体の仏座像が幾何学的に配置されていますが、方角や場所によって印相(手の形)が異なり、それぞれ仏の種類、性質も異なるといわれています。

方壇東側

阿閦如来/降魔印(あしゅくにょらい/ごうまいん)

ブッダが修行中に悪魔の誘惑を退けたことに由来する、煩悩に屈しない意思を具現化した仏。指先で地に触れ悪魔を払う様子を表しています。

方壇南側

宝生如来/与願印(ほうしょうにょらい/よがんいん)

すべての存在には絶対の価値があることを示す平等性智を具現化した如来。掌を上に向けた願いをかなえる印を結んでいます。

方壇北側

不空成就如来/施無畏印(ふくうじょうじゅにょらい/せむいいん)

何ものにもとらわれず実践することを意味する仏。手の平を前にかざし、人々の恐れを取り除き励ます姿を表します。

方壇西側

阿弥陀如来/禅定印(あみだにょらい/ぜんじょういん)

阿弥陀は無限の光で現世を照らし、西方にある極楽浄土をもつ仏。両手を合わせた瞑想中の印相で表されています。

方壇5段目

毘蘆遮那如来/説法印(びるしゃなにょらい/せっぽういん)

方壇の最上部は全方向で同一の毘蘆遮那如来が配されています。毘蘆遮那は宇宙の根本原理であるマハーヴァイローチャナ(大いなる輝くもの)がブッダの姿で顕れたもので、日本では大日如来として知られています。右手の親指と人差し指で輪を作る説法印を結んでいます。

円壇

釈迦如来/転法輪印(しゃかにょらい/てんぽうりんいん)

円壇上の72体はすべて同一の仏で、釈迦はブッダ本人のことです。指で輪を作る転法輪印を両手に結び、全方向に向いて真理を説く様子を表しています。

こうした如来の配置からもわかるように、ボロブドゥール寺院は仏教の世界観を体現した立体曼陀羅ともいえる宗教施設。この寺院を順序通りに参拝することによって、当時の人々は煩悩から悟りへの道を疑似体験したといわれています。

遺跡公園

ボロブドゥール寺院一帯は遺跡公園として整備されており、料金US$25を支払って入場します。公園内にはボロブドゥールと周辺の遺跡から出土した遺品を展示する考古学博物館をはじめ、レストランやショップなどの施設があり、じっくりと遺跡観光が楽しめます。

ボロブドゥール・サンライズ

夜明けの時間に合わせてボロブドゥール寺院に入場できる「ボロブドゥール・サンライズ」というプログラムが旅行者に人気です。遺跡公園内にある唯一の宿泊施設、マノハラ・ホテルで受付をしており、事前予約は不要。朝4時頃にホテルの受付で料金を支払い、4時30分ごろに入場。日の出の時間は5時30分くらいです。受付時にパスポート(コピー可)の提示が必要となります。

ムンドゥ寺院

ボロブドゥール寺院の東約3㎞に位置する仏教寺院で、ボロブドゥールと同時期に建設されたと推定されています。堂内に安置される3体の仏像をはじめ、外壁に刻まれた八大菩薩のレリーフや、中央通路の毘沙門天と鬼子母神のレリーフなど、当時のジャワ美術の成熟を物語る美しい作品が残されています。

ムンドゥ寺院 Candi Mendut
Jalan Mayor Kusen No.92, Mendut, Magelang, Jawa

パオン寺院

8世紀中頃の建設とされる小さな仏教寺院で、王の墓だったと推定されています。堂内には何も残されていませんが、天界の樹カルパタールを中心に半人半鳥のキンナラ(男)とキンナリ(女)、天人たちが描かれた外壁のレリーフがみごとです。ほかに、蓮の花を持つターラー菩薩の彫刻も見られます。

パオン寺院 Candi Pawon
Brojonalan, Dusun 1, Wanurejo, Borobudur, Magelang, Jawa
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