マレーシアの朝は屋台メシから始まる
マレーシアでは、朝から外食があたり前。理由はとてもシンプルで、気温が30度を超える日中よりも、比較的涼しい朝に活動をしたほうが、店側もお客さん側も楽だから。午前中にさっさと売り切って店じまい、という繁盛店も多数あります。地元で人気のローカルフードを食べたいなら、朝活をおすすめします。
以前マレーシアに住んでいたとき、「朝7時半にロティ・チャナイの店に行こう!」と友人に誘われ、えっ、そんなに朝早く? と驚いたのですが、行ってみれば、多くのお客さんでにぎやか。子ども連れの家族から目がラブラブのカップルまで、団らんあり、打ち合わせあり、デートあり、とシチュエーションも様々なようでした。
外食文化が発展しているマレーシアは、ランチで外食するのとなんら変わらない感覚で、朝から屋台メシ。そのため提供されているメニューは、ご飯、麺、カレーと何でもあり。ここでは、ぜひ朝に食べて欲しい料理を、そのルーツとともに紹介します。
香り立つご飯と旨辛サンバルのコンビ「ナシレマッ」
ココナッツミルクで炊いた香りのいいご飯に、唐辛子や玉ねぎを炒めて作るサンバルソースを混ぜて食べる料理。マレーシア人なら誰しも“推し”の店があり、好みや思い出を語り出したらエンドレス。もともと農作業前の朝食としてうまれたパワーフードで、小魚、卵、ピーナッツのおかず付きで栄養バランスもグッド。サンバルの辛さで目も覚めます。
インドをルーツにもつカレー味の軽食「ロティ・チャナイ」
ロティとはマレー語でパンのこと。クロワッサンのような軽い食感の軽食で、スパイスの効いたカレーソースにつけて食べます。インドからの移民が持ちこんだパロタが原型で、具なしのプレーンに加えて、卵、チーズ、イワシ、バナナなど具入りも人気。練乳や砂糖をかけたスイーツタイプもあります。インド系の食堂「ママッ」で食べるのが定番です。
ココナッツが甘く香るモーニングの定番「カヤトースト」
カスタードクリームのようなリッチな甘さのカヤジャム。ココナッツミルクと卵で作るスプレッドで、20世紀の初めごろ、西洋のジャムの影響を受けて考案されたのだそう。カリッと焼いたトーストに、カヤジャムとバターをWでサンドするのがお決まり。それを温泉卵に浸せば、コクまろ甘じょっぱくてやみつきになります。たかがトーストと侮るなかれです。
ふくよかな香りの漢方スープ「バクテー」
10種以上の漢方と一緒に、豚肉を煮込んだスープ料理。中国からの移民が、体力勝負の仕事の前に、豚の骨を煎じて飲んだのが始まりといわれています。現在も1日の活力源として朝に食べる習慣があり、週末の朝ともなると、クアラルンプールのバクテー店は大にぎわい。家族や友人同士でワイワイ鍋を囲んでいる姿をみると、こちらまで元気になります。
朝にぴったり。サラサラ食べられる「粥」
日本でなじみのある粥は、マレーシアでも定番の味。粥屋台が町のいたるところにあり、ケンタッキーフライドチキン(KFC)などファストフード店でもメニュー化されているほどポピュラー。胃にやさしいので、イスラム教徒の断食明けの食事としても重宝されています。トロトロに煮込んだもの、水分多めのサラサラ系。さらに具も多彩にあるので、毎日食べても飽きません。
朝からつるっと。バラエティ豊かな「麺類」
中国由来のマレーシアの麺は、東南アジアらしい食材が加わって多様な味に。朝から提供されている麺も、唐辛子タレ付きの鶏スープ麺、香味油のまぜ麺、カレー麺など多種多彩。とくに中国系マレーシア人は、ご飯よりも麺のほうが“軽い食事”と考えるらしく、朝食はいつも麺という人さえいます。ご飯とおかずではなく、麺とおかずという食事パターンもあります。
豚まん、カレーまん、カヤまん。種類豊富な「パオ」
町のいたるところにあるパオの店。パオとは中華まんのことで、もちろん中国由来。ただし、豚まん、チャーシュまんといった定番の味から、チキンカレーまん、野菜まん、カヤまん(カヤジャム入り)もあり、かなりローカル化されています。日本でたとえるなら、菓子パンのような立ち位置で親しまれています。ホットケースで販売されており、ほかほか、ふかふかです。
もちもち食感の甘い蒸し菓子「クエ」
カヤトーストしかり、果物しかり、朝食に甘いものを食べるのはマレーシアではごく普通のこと。なかでも人気なのが、大福やういろうによく似たクエ。米粉、もち米、ココナッツミルクなどを使って、蒸したり揚げたりした、ひとり分サイズのおやつの総称です。甘いクエは、食後のデザートというより、手軽に栄養補給ができるエナジーバーのような存在です。
文・写真(TOP写真のぞく):古川 音 (Oto Furukawa)