ラオスに眠るミステリアスな世界遺産
「ジャール平原」と北部シェンクワーン観光
2019年、ラオスで3番目となる世界遺産が登録されました。ラオス北部のシェンクワーンにある「ジャール平原」です。シェンクワーンエリア一帯に無数の石壺が点在していますが、その由来には諸説あり、今も謎に包まれているといいます。ジャール平原の見どころと観光の拠点となるポーンサワンの歩き方をご紹介していきましょう!
起点となるポーンサワンの町にも見どころがたくさん
ジャール平原の起点となるのはポーンサワン。シェンクワーン県の県庁所在地ということもあり、比較的大きな建物が建ち並ぶ町です。とはいえ、レストランや宿は中心部のメインストリートに集中していて、地元の人々が集う食堂から観光客向けのカフェ、ラオス料理からハンバーガーなどの料理まで選択肢も幅広く、数日滞在していても困ることはなさそうです。
また、宿も大型の中級ホテルからバックパッカー向けのゲストハウスまで旅の予算に合わせて選ぶことが可能です。中心部の一角に位置するポーンサワン・マーケットは、ぜひ訪れてほしいスポット。おかずをテイクアウトできる屋台からスイーツ、お土産になりそうな乾麺など見ているだけでも楽しい市場です。
ポーンサワンの町なかでは、ジャール平原や山岳民族にまつわるさまざまな展示物が飾られた「シェンクワーン県博物館」や不発弾被害の情報を知ることができる「UXOサバイバー・インフォメーションセンター」など、歴史や文化を学べる施設があります。また、中心地からは少し離れますが、観光案内所に置かれている不発弾の展示も訪れてほしい見どころのひとつです。
巨大かつ広大!ジャール平原の3つのサイトを見学
ジャール平原の世界遺産の登録名称は「シェンクワーン県ジャール平原の巨大石壺群」。その名のとおり、2000以上もの石壺がシェンクワーン県内に点在していて、これらは鉄器時代の葬儀で遺体を埋葬する棺として使用されていたと考えられています。ほかにも酒壺や米壺に用いられていたのでは?なんていう説もあり、現在でも正確な使い道は分かっていない、ラオス最大のミステリー。
さて、観光客がおもに見学できるのは3つのサイト。地元のガイドさん曰く、通常はひとつだけ離れたサイト1から行く人が多いので、穴場は午前中にサイト2と3から行くことだそう。実際に訪れてみると、本当に人がまばらで「本当にここが世界遺産!?」と思うほど贅沢な空間をひとり占めすることができます。サイト2は二つのグループに分かれ、細長い壺が特徴。丘の上から見える絶景は写真に撮りたくなること間違いなしです。
続いてはサイト2に近いサイト3を訪れてみましょう。チケット売り場からちょっぴりぬかるんだ水田地帯を歩くこと10分。目の前を水牛が横切る……そんなのどかな風景に癒やされながら歩くのがサイト3の醍醐味です。この遺跡は8つのグループで構成されていますが、断面が長方形のものが多いといわれています。サイト2との違いにも注目してみてくださいね。
最後はサイト1へ。ここは数あるサイトのなかでも最大規模です。チケット売り場からは無料のカートが巡回しているので、利用するのがおすすめ。もちろん体力に自信がある人は、入口のマップを頼りに歩いていくのも◎です。ここの見どころは、高さ3.25m×直径3m×高さ6tもある最大の石壺!周辺を散策すると、空爆でできたクレーターや塹壕の跡もあるので、時間をかけてゆっくり見て回りましょう。
ジャール平原のアクセスと周辺の見どころもチェック
ポーンサワンへのアクセスはいくつかありますが、飛行機を利用する場合、首都ヴィエンチャンからはラオス航空やラオ・スカイウェイの直行便で約40分。ルアンパバーンからの直行便は2024年7月現在なく、バスで行くのが一般的です。休憩を挟みながら約8時間かかるので、1日がかりの移動ですね。また、ポーンサワンやシェンクワーン周辺は公共交通機関が発達していないので、宿や町なかでオプショナルツアーに申し込んだり車をチャーターしたりすることをおすすめします。
ポーンサワンに何日か滞在するならば、ポーンサワン周辺の町々にも訪れてみてください。例えば、かつてオールドキャピタルと呼ばれていたムアン・クーンには、16世紀に建てられたタート・フーンやタート・チョムペットがあり、高台から町を一望することができます。ムアン・カムにあるタム・ピウ洞窟は、ラオス内戦の悲惨さを感じられる場所。1968年、避難生活を送っていた洞窟にロケット弾が撃ち込まれ、多くの人々の命が失われました。
ムアン・カムを訪れる途中、水曜と日曜にのみ開催されるバーン・ノーンペットの朝市に参加するのもおすすめですよ。
首都ヴィエンチャンやルアンパバーンはもちろん、ラオスを訪れるリピーターやもう1都市どこへ行こう?と計画を立てている人は、世界遺産や歴史の宝庫シェンクワーンをぜひ選択肢のひとつに加えてみてくださいね。
文・写真:水野千尋